

山肌に、6〜7万本のホダ木が並べられた2ヘクタールものホダ場。背の高い杉の木が、影をつくるためにそれを囲っているが、中に点々と桜の木が植えられている。春を迎えれば雅な風景になるのだろうか? しかしそれは、季節を彩るためそこに置かれたのではないことが、ホダ場をよく見ればわかる。桜のある部分には杉の木がないことに気づくからだ。杉の木を根こそぎさらったもの。それは、平成16年の台風だった。
「窓からホダ場を眺めていると、杉の木がグルングルンと大きく揺れて、ほどなく次々に風が巻き倒していった。『もうやめてくれ!!』と涙ながらに叫び、それを眺めているしかなかったのが情けなくて」
加藤至誠さんは、ホダ場に隣接する自宅からその惨劇を見ていた。
台風が去ってみると、杉の木が倒れた部分にたくさんの光が射し込み、しいたけ栽培には不向きな環境となっていた。これを普通に修復しようと思えば、6〜7年はかかるという。一時は、あまりの被害の大きさに、栽培をやめてしまおうかとも思ったらしい。しかし、至誠さんは、葉っぱの大きな広葉樹を植え、光量の調節をしようと思いついたのだ。それは大分県では類のない、初めての試みだった。
被害から4年たった今、桜の木の恩恵もあって、至誠さんのホダ場では、年間約3500kgものしいたけが収穫されている。そのすべてが原木栽培で、クヌギの原木に打つコマの数は、なんと35万を超える。それほど手間の多い仕事だから、至誠さんは、しいたけ栽培に必要なものを、こう語ってくれた。
「しいたけを育てるには、3つの木が必要。原木、ホダ木、それからヤル気」
そのヤル気につながることで、彼が目指していることがある。天皇杯の受賞だ。
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| 低い木は桜やケヤキの木。葉が茂っている夏場、取り込む光の量を調整してくれる |
本来なら背の高い杉の木が適している |
コマ打ち用に切り出されたクヌギの木 |
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| 1本1本手で土に立てられた原木 |
役目を終えた原木は、ホダ場の片隅で土に還る |
収穫した生しいたけを乾燥機で乾かして、規格別に分けていく |
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| 農林水産大臣賞のトロフィーを始め、受賞した数々の賞の一部 |
目指すは天皇杯という加藤至誠さんと、妻の美恵子さん |
台風にやられた杉の木の代わり、また新たな杉の若木が成長中 |
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